改善した方がいいと思う仕事がある。
今より効率よく進められる方法も考えた。
それなのに、上司に提案しても、なかなか採用してもらえない。
「良いアイデアだと思うのに、どうして通らないんだろう?」
そんな経験はありませんか。
改善提案が通らないのは、必ずしもアイデアが悪いからとは限りません。
上司には、会社や部署の方針に基づいて判断する役割があります。
また、組織の状況や取り組むタイミング、必要な工数なども考えなければなりません。
そのため、自分が考えた改善案の良さを説明するだけでは、採用されないこともあります。
私は会社員時代、25年以上にわたってBPR(業務プロセス改革)に取り組んできました。
自分で企画した改革では、最初から賛同してもらえることの方が少なく、
反対されることも珍しくありませんでした。
そんな経験を重ねるなかで、改善提案を前に進めるには、
相手の立場で考え、提案の仕方を工夫することが大切だと学びました。
この記事では、私が実践してきた経験をもとに、
改善提案を上司に伝えるための3つの工夫を紹介します。
大切なのは、自分の案をそのまま認めてもらうことではありません。
上司が納得して判断できるようにし、今実現できる一歩から改善を進めることです。
改善提案が通らないのはなぜ?

仕事をしていると、「ここを変えれば、もっと効率よくなるのに」と感じることがありますよね。
ところが、実際に改善案を提案しても、思ったように採用してもらえない。
その理由の一つが、上司と自分では、仕事を見る立場が違うことです。
自分は、日々の仕事で感じている不便さや無駄を解消したいと考えます。
一方、上司は、その改善が部署全体にどのような影響を与えるのか、
ほかの仕事との優先順位はどうか、どれだけの人手や時間が必要になるか、
といったことも考えなければなりません。
たとえ改善効果が期待できる提案でも、
今は別の課題への対応が優先されているかもしれません。
あるいは、提案の方向性には賛成でも、
実施するには負担が大きすぎると判断されることもあります。
つまり、良い改善案であることと、
今その案を採用できることは、必ずしも同じではないのです。
私は長年のBPR経験を通して、
提案する側の考えだけでは、物事は前に進まないと感じてきました。
上司が何を基準に判断しているのか。
組織は今、どのような状況にあるのか。
そうしたことを理解したうえで、提案の仕方を考える必要があります。
では、具体的にどのような工夫をすればよいのでしょうか。
次から、私が実践してきた3つの工夫を紹介します。
改善提案を通すための3つの工夫
① 上司の視点で、会社や部署の方針と結びつける
改善提案をするとき、最初に考えたいのは、
上司がどのような視点で判断するかということです。
自分にとっては、仕事が楽になる、作業時間が短くなる、ミスが減る
といったことが改善の理由になります。
もちろん、どれも大切なことです。
しかし、それだけでは上司が採用を判断する理由として、十分ではないこともあります。
上司は、会社や部署の方針に沿って仕事を進める立場にあります。
そのため、自分が改善したい理由を、
組織として取り組む理由に置き換えて説明することが大切です。
例えば、部署の方針として
「顧客への対応を迅速にする」という目標が掲げられていたとします。
そのとき、単に「この作業を改善すれば、30分短縮できます」と説明するよりも、
この作業を改善すれば、顧客への回答までの時間を短縮できます。
部署が目指している対応の迅速化にもつながります
と説明した方が、上司も改善の必要性を判断しやすくなります。
同じ改善案でも、何を目的として説明するかによって、受け取られ方は変わります。
私はBPRを進めるときも、常に会社や部署が何を目指しているのかを意識していました。
自分が考えた改革の良さを一方的に説明するのではなく、
その改革が組織にとってどのような意味を持つのかを伝える。
上司が「確かに、それなら取り組む意味がある」と納得できることが重要だからです。
ただし、会社や部署の方針を、提案を通すために無理やり結びつけるのは違います。
本当にその方針に貢献できるのかを、自分自身でも考える必要があります。
改善案を考えたら、一度、上司の立場から見直してみる。
「この改善は、部署が目指していることにどう役立つのだろう?」
その問いを持つだけでも、提案の伝え方は変わってくると思います。
相手の立場に合わせて説明する方法については、以下の記事でも紹介しています。

② 組織の状況を見て、提案するタイミングを考える
改善提案では、何を提案するかだけでなく、いつ提案するかも重要です。
会社や部署では、日々さまざまなことが起きています。
新しい仕事が始まることもあれば、予期しなかった問題が発生することもあります。
上司も、そうした状況に対応しながら、何を優先するかを判断しています。
そのため、どれほど良い改善案でも、
組織の状況によっては、すぐに取り組めないことがあります。
反対に、組織が抱えている問題の解決策として提案できれば、
採用される可能性は高まります。
例えば、顧客からの問い合わせへの回答が遅れ、問題になっているとします。
以前から回答までの時間を短縮するアイデアを持っていたなら、
その問題への対応策として提案することができます。
「この仕事の流れを変えれば、回答までの時間を短縮できると思います」
普段なら優先順位が低かった改善案でも、
目の前の問題を解決する方法として示せば、上司も必要性を理解しやすくなります。
私はBPRを進めるときも、組織の動きをよく見ていました。
自分が実現したい改革があっても、いつでも同じように提案するわけではありません。
組織が何に困っているのか。今、どのような課題が重要になっているのか。
そうした状況を捉えながら、提案するタイミングを考えていました。
もちろん、問題が起きるまで待つ必要はありません。
新しい方針が示されたときや、
仕事の進め方を見直す機会が生まれたときも、改善を提案する良いタイミングになります。
また、問題が発生したときには、
その場しのぎの対応だけで終わらせないことも重要です。
目の前の問題を解決すると同時に、
同じ問題が繰り返されないよう、仕事の流れそのものを見直す。
そうした提案ができれば、
単なる応急処置ではなく、継続的な改善にもつながります。
改善案が採用されなかったとしても、それで終わりとは限りません。
組織の状況が変われば、以前は難しかった提案が必要とされることもあります。
だからこそ、日頃から組織の動きに目を向け、改善の機会を捉えることが大切だと思います。
目の前の問題への対応だけでなく、
理想と現状の違いから問題を捉える考え方については、
以下の記事で詳しく紹介しています。

③ 上司が判断できる3つの案を用意する
改善提案をするとき、最も良いと思う案を一つだけ示していないでしょうか。
もちろん、自分なりに考え抜いた案を提案することは大切です。
しかし、上司がその案を採用するか、しないかの二択になってしまうと、
実現が難しくなることもあります。
そこで、私が実践していたのは、最初から複数の選択肢を用意することです。
具体的には、次の3つの案を考えていました。
- 本命案: 最も効果が期待できる、理想とする改善案
- 折衷案: 改善の効果をある程度残しながら、実施する範囲や負担を抑えた案
- 段階的実施案: まず一部の仕事から始め、成果を確認しながら対象を広げていく案
例えば、部署全体で使っている情報管理の方法を改善したいとします。
本命案は、部署全体の仕事の流れを見直し、情報を一元管理する方法です。
しかし、これには関係者との調整や、新しい仕組みの準備など、
多くの時間と工数が必要になります。
そこで、折衷案として、
特に問題が大きい業務に範囲を絞って改善する方法を用意します。
さらに、段階的実施案として、まず協力してくれる担当者と一部の業務で試し、
効果を確認してから対象を広げる方法も考えます。
このように選択肢を用意すれば、
上司は改善の効果だけでなく、実施する負担やリスクも比較しながら判断できます。
そして、ここからが大切です。
私は、折衷案や段階的実施案を、
単なる妥協案として考えていたわけではありません。
どの案が選ばれても、将来的には本命案につながるように設計していました。
実際には、最初から本命案が選ばれるとは限りません。
むしろ、折衷案や段階的実施案が選ばれることも多くありました。
それでも構わないと考えていました。
まず実現できる範囲で改善を進め、成果を出す。
その成果をもとに、次の改善を提案する。
そうして少しずつ対象を広げていけば、
当初目指していた姿に近づける可能性があるからです。
私は大きなBPRを進めるときも、最初からすべてを変えようとはしませんでした。
まず改善しやすい一部の仕事を対象に、
協力してくれる部署や担当者と、実際の業務の中で試していました。
机上で良い案に見えても、実際の仕事で使えなければ意味がありません。
小さくても実際の業務で成果を示すことで、
協力してくれる人や賛同者も少しずつ増えていきました。
こうした経験から、私は、最初の提案ですべてを実現する必要はないと考えています。
目指す姿は持ちながら、今できる一歩を選ぶ。
上司に選択肢を示すことは、単に提案を採用してもらうための工夫ではありません。
改善を実際に前へ進めるための方法でもあるのです。
改善提案は、通すことより実現することが大切

改善提案をするとき、自分が考えた案を採用してもらうことに
意識が向いてしまうことがあります。
時間をかけて考えた案であれば、なおさらでしょう。
しかし、改善提案の目的は、
自分の案を通すことではなく、実際の仕事を良くすることです。
たとえ本命案が採用されなくても、
折衷案や段階的実施案によって仕事が改善されるなら、それも一つの成果です。
そして、実際に取り組んでみると、
最初には見えていなかったことがわかる場合もあります。
思ったほど効果が出ないこともあれば、予想以上の成果が得られることもあるでしょう。
また、上司や関係者から、自分では気づかなかった問題を指摘されるかもしれません。
そうした結果や意見を取り入れて、改善案を見直すことも必要です。
私が大切にしているのは、
自分の案にこだわるのではなく、改善の目的にこだわるという考え方です。
最初に考えた本命案が、必ずしも最後まで最善とは限りません。
実際の仕事を良くするという目的を見失わなければ、進め方を変えてもよいのです。
改善は、提案が採用されたら終わりではありません。
実際に試し、その結果を確かめ、必要なら次の方法を考える。
そうした積み重ねによって、仕事は少しずつ良くなっていくのだと思います。
まとめ|上司が判断できる提案に変えよう
改善提案が通らないとき、必ずしもアイデアそのものに問題があるとは限りません。
自分が考えた改善案の良さを伝えるだけでなく、上司が判断しやすい形に整えることが大切です。
今回紹介したのは、次の3つの工夫です。
- 上司の視点で、会社や部署の方針と結びつける
- 組織の状況を見て、提案するタイミングを考える
- 上司が判断できる3つの案を用意する
最初から理想どおりに進められなくても、実現できる一歩はあるかもしれません。
大切なのは、自分の案を採用してもらうことではなく、仕事を実際に良くすることです。
もし今、採用されない改善案があるなら、
一度、上司の立場から見直してみてはいかがでしょうか。
これまでとは違う伝え方や、実現できる方法が見つかるかもしれません。

