問題解決の考え方|ビジョンから現状を変える5つのステップ

問題解決の考え方|ビジョンから現状を変える5つのステップ

問題が起きると、私たちはまず「どう直すか」を考えます。

作業に時間がかかっているなら、手順を減らす。

ミスが多いなら、チェックを増やす。

人手が足りないなら、人を増やす。

どれも間違いではありません。

ただ、目の前の問題だけを直しても、しばらくすると別の形で同じような問題が出てくることがあります。

今ある仕組みを前提に、その一部分だけを改善しているからです。

私は会社員時代、長くBPR(業務プロセス改革)に関わってきました。

そこで使っていたのは、目の前の問題から考える方法ではありません。

最初に考えるのは、

「この業務を、これからどんな状態にしたいのか」

ということでした。

ありたい姿(ビジョン)を描き、今との違いを見る。

そのギャップの中から、本当に解くべき問題を見つける。

そして仮説を立て、小さく試しながら修正し、方向が見えてきたところで仕組みそのものを大きく変える。

根本から変えるには時間もかかります。

この記事では、私がBPRの現場で実践してきた、

ありたい姿(ビジョン)から考える問題解決の進め方

を、5つのステップで紹介します。

目次

目の前の問題を直すだけでは、本質は変わらない

目の前の問題を直すだけでは、本質は変わらない

問題が起きると、その原因を探し、対策を考えます。

それ自体は必要なことです。

ただ、目の前に見えている問題だけを直していると、

部分的な改善で終わってしまうことがあります。

たとえば、ある業務に時間がかかっているとします。

そこで、

  • 手順を減らす
  • 人を増やす
  • チェック方法を変える
  • 新しいツールを入れる

といった対策を取れば、一定の効果は出るかもしれません。

しかし、その業務そのものが本当に必要なのか。

そもそも今の流れで続ける必要があるのか。

役割の分け方や情報の持ち方に問題はないのか。

そこまで考えなければ、根本的な解決にはなりません。

目の前の問題から考え始めると、どうしても「今ある仕組み」を前提にしやすくなります。

すると、

「どう改善するか」

という発想にはなっても、

「そもそも、この仕組みでいいのか」

というところまでは戻りにくくなります。

BPRでは、この前提そのものを見直します。

今の仕事を少し速くすることが目的ではありません。

これからどんな業務の姿にしたいのか。

どんな働き方にしたいのか。

どんな情報の流れにしたいのか。

そうした「ありたい姿」を先に考えます。

すると、

「時間がかかっていること」が問題なのではなく、

不要な作業が残っていることかもしれません。

情報が分断されていることかもしれません。

承認が多すぎることかもしれません。

あるいは、仕事の役割そのものを見直した方がよいかもしれません。

大切なのは、

目の前の問題をどう直すかではなく、どんな状態を実現したいのかから考えることです。

ありたい姿から考える問題解決とは

ありたい姿から考える問題解決では、出発点が違います。

最初に見るのは、今起きている問題ではありません。

まず、

「これから、どんな状態にしたいのか」

を考えます。

そのうえで現在の状態を見る。

すると、

「今どこが悪いのか」

ではなく、

「ありたい姿と今の間に、どんな差があるのか」

という見方ができます。

この差が、解くべき問題になります。

たとえば、ある業務に時間がかかっているとします。

目の前の問題だけを見るなら、

「どうすれば30分短くできるか」

と考えるかもしれません。

しかし、ありたい姿から考えるなら、

「そもそも、この業務を将来どうしたいのか」

から考えます。

人が毎回入力する仕事をなくしたいのか。

必要な情報が一度入力されれば、その後は自然に流れる仕組みにしたいのか。

現場で判断できるようにして、承認そのものを減らしたいのか。

目指す姿によって、解決すべき問題は変わります。

つまり、問題とは最初から決まっているものではありません。

どんな未来を目指すかによって、問題の見え方も変わるのです。

BPRでは、今の業務を少しずつ良くするだけではありません。

業務の流れや役割、情報の持ち方、システムまで含めて、これからの姿を考えます。

そのため、最終的には今の仕組みを根本から変えることもあります。

ただし、大きく変えるからこそ、最初から一気に変えるわけではありません。

仮説を立て、一部で試し、結果を見て修正する。

そうやって少しずつ確度を高めながら、最終的な変化につなげていきます。

ありたい姿から現状を変える5つのステップ

ありたい姿から現状を変える5つのステップ

ここからは、ありたい姿から考える問題解決を、5つのステップで見ていきます。

最初から正解を当てる必要はありません。

未来の姿を描き、現状を見て、仮説を立てる。

そして、試しながら修正していきます。

ステップ1|ありたい姿を描く

最初に考えるのは、

「何を直すか」ではなく、「どんな状態にしたいか」

です。

ここを飛ばすと、どうしても今ある仕組みの中で改善案を考えることになります。

たとえば、

「申請に時間がかかる」

という問題があったとします。

すぐに対策を考えれば、

入力項目を減らす。

承認を一つ減らす。

システムを少し使いやすくする。

といった案が出てくるでしょう。

ただ、その前に、

「そもそも、将来どんな申請業務にしたいのか」

を考えます。

申請そのものをなくせないか。

必要な情報が自動で集まるようにできないか。

現場で判断できる範囲を広げられないか。

承認すること自体を減らせないか。

こうして考えると、目の前の問題とは違う景色が見えてきます。

ありたい姿を描くときは、一つの作業だけを見るのではありません。

現場ではどう働くのか。

管理者は何を判断するのか。

情報はどう流れるのか。

顧客や利用者はどう感じるのか。

システムはどんな役割を持つのか。

そうした全体像を考えます。

最初から細かく決める必要はありません。

まずは、

「こちらの方向へ進みたい」

という骨格が見えれば十分です。

ありたい姿は、完成図というより、進む方向を示すものです。

その方向があるからこそ、

何を残すのか。

何を変えるのか。

何をなくすのか。

を考えられるようになります。


ありたい姿をもう少し具体的に描きたいときは、未来の全体像を組み立てる「構想力」が役立ちます。

ステップ2|現状を事実で見る

ありたい姿を描いたら、次に見るのは現在地です。

ここで大切なのは、

「こうなっているはず」ではなく、「実際はどうなっているか」

を見ることです。

管理する側から見ると、

「この手順で動いている」

と思っていても、現場では違うやり方をしていることがあります。

システム上は一つの流れに見えていても、その前後で、

  • Excelに転記している
  • 紙に書き直している
  • 誰かの確認を待っている
  • 別の人に聞かないと進められない
  • 同じ情報を何度も入力している

といった作業が隠れていることもあります。

私はBPRを進めるとき、資料だけを見て判断しないようにしていました。

実際に仕事をしている人の話を聞く。

現場を見る。

打ち合わせを見る。

情報がどこから来て、どこへ流れているのかを見る。

仕事が止まる場所や、判断に迷っている場面を見る。

そうすると、資料だけでは見えなかったことが出てきます。

ここでは、まだ解決策を考えません。

まず、

今、何が起きているのかを事実として捉えること。

たとえば、

「現場の意識が低い」

というのは解釈です。

一方で、

「同じデータを3回入力している」

「承認まで平均2日待っている」

というのは、観察できる事実です。

解釈から始めると、その解釈に合う対策を考えてしまいます。

事実から始めれば、

「なぜこうなっているのだろう」

と、もう一段深く考えることができます。

未来の姿と、今起きている事実。

この二つを並べることで、初めてギャップが見えてきます。


現状を見るときは、解釈を急がず、まず事実を拾うことが大切です。

ステップ3|ギャップの中から、本当に解くべき問題を見つける

ありたい姿と現状を並べると、その間にいくつもの差が見えてきます。

ただし、その差をすべて問題として扱う必要はありません。

大切なのは、

「何が、本当にありたい姿を妨げているのか」

を見つけることです。

たとえば、

「処理に時間がかかっている」

という現象があったとします。

それだけを見ると、作業時間を短くすることが問題に見えます。

しかし、もう少し深く見ると、

  • 同じ情報を何度も入力している
  • 部門ごとに情報が分断されている
  • 承認が多すぎる
  • 判断基準が曖昧で、毎回確認が必要になる
  • そもそも、その作業自体が必要ない

といった別の問題が見えてくることがあります。

つまり、

見えている現象と、解くべき問題は同じとは限りません。

ここでは、原因を一つに決めつけるのではなく、構造を見ます。

何と何がつながっているのか。

どこで仕事が止まっているのか。

誰の判断に依存しているのか。

どんな前提の上に今の仕組みが成り立っているのか。

そうやって見ていくと、

「この手順を少し直せばよい」

ではなく、

「情報の持ち方そのものを変えた方がよい」

「役割分担を見直した方がよい」

「承認という仕組み自体を減らした方がよい」

といった方向が見えてきます。

問題解決では、この段階がかなり重要です。

ここで表面的な問題を選んでしまうと、その後どれだけ丁寧に解決策を考えても、ありたい姿には近づきません。

どの問題を解けば、未来の姿に近づくのか。

それを見極めることが必要です。


目の前の現象だけでなく、仕事や情報、人の動きのつながりを見るには、構造で捉える視点が役立ちます。

ステップ4|仮説を立て、小さく試す

本当に解くべき問題が見えてきたら、

「こう変えれば、ありたい姿に近づくのではないか」

という仮説を置きます。


正解が見えないときは、最初から答えを決めるのではなく、仮説を置いて確かめていきます。


根本から仕組みを変えるほど、実際にやってみなければ分からないことが増えます。

人の動き。

現場での使いやすさ。

情報の流れ。

想定していなかった別の問題。

机の上では見えなかったことが、試して初めて見えてきます。

だから、いきなり全体を変えません。

まず一部で試します。

結果を見ます。

うまくいかなければ仮説を修正します。

そして、また試します。

私がBPRを進めていたときも、最初から完成形が見えていたわけではありません。

大きな方向は描いていても、細かなやり方は試しながら決めていきました。

ここでの小さな実験は、

大きく変える前に、失敗できる範囲で先に学ぶ

ためのものです。

仮説が外れても構いません。

何が違ったのか。

どこに無理があったのか。

何を見落としていたのか。

そこから次の仮説をつくればよいのです。

守るべきなのは最初の案ではありません。

ありたい姿へ向かう方向です。


実際に小さく試す方法は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

ステップ5|確信が持てたら、仕組みを大きく変える

小さな実験を繰り返し、方向が見えてきたら、実際の仕組みを変えていきます。

小さく試してきたのは、小さな改善を続けるためではありません。

最終的に大きく変えるためです。

仮説を何度も確かめ、

「このやり方ならいけそうだ」

「現場でも回りそうだ」

「ありたい姿に近づけそうだ」

という手応えが持てたら、ある時点で切り替えます。

たとえば、

  • 業務の流れを変える
  • 役割分担を変える
  • 承認の仕組みを変える
  • 情報の持ち方を変える
  • システムを入れ替える

といった形です。

この段階では、部分的な改善ではなく、

仕事のやり方そのものを変える

ことになります。

BPRでは、ここが大きな転換点です。

それまで何度も小さく試していても、本番では一気に変えなければならない場面があります。

古いやり方と新しいやり方を、いつまでも並行して続けるわけにはいかないからです。

もちろん、100%成功すると分かってから動けるわけではありません。

大切なのは、

これまでの実験から、進む方向に十分な根拠があるか

を判断することです。

そして、切り替えた後も終わりではありません。

実際に動かしてみれば、新しい問題も見えてきます。

そこで振り返り、必要なら修正する。

ありたい姿そのものを見直すこともあります。

大きく変えたあとも、現実を見ながら更新していきます。


実行したあとに経験から学びを取り出し、次の修正につなげるには、振り返りも欠かせません。

この問題解決には、中長期の時間軸が必要

ありたい姿から考える問題解決は、短期間で答えを出す方法ではありません。

むしろ、

数年先の姿を見ながら、段階的に変えていく方法

です。

私がBPRに取り組んでいたときも、ひとつの改革を3年ほどかけて進めることがありました。

業務だけを変えればよいわけではありません。

人の役割を変えることもあります。

情報の流れを変えることもあります。

システムをつくり直すこともあります。

新しいやり方を現場に定着させる時間も必要です。

一方で、

「3年かかるなら、今は何もしなくていい」

ということではありません。

大切なのは、

長い時間軸で方向を決め、短い単位で仮説検証を続けること

です。

3年後に実現したい姿があっても、今日からできることはあります。

現場を見る。

一つの仮説を試す。

一部の業務だけ、新しいやり方に変えてみる。

実際に使ってもらい、問題を確かめる。

そうした小さな実験を積み重ねながら、改革の確度を高めていきます。

つまり、

時間軸は長く、行動の単位は小さくする。

目の前の問題だけを追いかけていると、その場しのぎになりやすくなります。

反対に、遠い未来だけを見ていても、改革は進みません。

数年先のありたい姿を持ちながら、目の前では小さく試し、学び続ける。

その積み重ねが、大きな変化につながります。


仕事だけでなく、人生にも使える

仕事だけでなく、人生にも使える

ありたい姿から考える問題解決は、仕事だけのものではありません。

人生の中でも、同じ考え方を使うことができます。

たとえば、

「運動不足を解消したい」

という問題があったとします。

目の前の問題だけを見るなら、

歩く時間を増やす。

筋トレを始める。

ジムに通う。

といった対策を考えるでしょう。

ただ、その前に、

「これから、どんな身体で暮らしたいのか」

を考えてみます。

健康診断の数値を良くしたいのか。

疲れにくい身体にしたいのか。

年齢を重ねても、自分の足で動ける身体でいたいのか。

あるいは、昔のように身体を軽く動かせる感覚を取り戻したいのか。

ありたい姿によって、必要な行動は変わります。

時間の使い方も同じです。

「いつも時間が足りない」

と感じたとき、予定を詰め直すだけではなく、

「本当は、どんな一日を送りたいのか」

から考えてみます。

何に時間を使いたいのか。

何を減らしたいのか。

どんな時間を大切にしたいのか。

それが見えてくると、単なる時間管理ではなく、今の生活そのものを見直すことができます。

仕事についても、

「もっと効率よく働きたい」

ではなく、

「これから、どんな働き方をしたいのか」

と考える。

すると、解くべき問題そのものが変わることがあります。

人生を変えるときも、いきなりすべてを変える必要はありません。

まず、少し試してみる。

時間の使い方を変えてみる。

新しいことを始めてみる。

これまで続けてきたことを少し減らしてみる。

結果を見ながら、自分に合う方向へ修正していく。

仕事の改革と同じように、

人生も、未来の姿を描き、小さく試しながら更新していくことができます。


今の自分に合わなくなった役割や価値観、時間の使い方を見直したいときは、こちらの記事も参考になります。

1分ワーク

今、あなたが解決したいと思っている問題を一つ書いてみてください。

そのあと、すぐに解決策を考えるのではなく、

「本当は、どんな状態にしたいのか」

と問い直します。

次に、

「今との一番大きな差は何か」

を書いてみます。

たとえば、

「仕事が忙しい」

なら、

「毎日、落ち着いて考える時間を持てる働き方にしたい」

かもしれません。

すると問題は単なる忙しさではなく、

会議の多さ。

仕事の抱え込み。

役割の偏り。

やらなくてもよい仕事。

といった別のところにあるかもしれません。

問題を解く前に、まず未来を置いてみる。

それだけでも、見えてくる問題は変わります。


まとめ

問題解決というと、目の前の問題をできるだけ早く直すことだと思いがちです。

しかし、それだけでは今の仕組みを前提にした改善で終わることがあります。

本質的に変えるなら、

まず、どんな状態を実現したいのかを描くこと

から始めます。

そのうえで、

  1. ありたい姿を描く
  2. 現状を事実で見る
  3. ギャップの中から、本当に解くべき問題を見つける
  4. 仮説を立て、小さく試す
  5. 確信が持てたら、仕組みを大きく変える

という流れで進めます。

そして、この方法には時間が必要です。

時間軸は長く、行動の単位は小さくする。

数年先の未来を見ながら、今できる実験を重ねていく。

これが、私がBPRの現場で続けてきた問題解決の基本でした。

問題をなくすことだけを考えるのではなく、

これからどうありたいかを考え、その未来から今を見る。

そうすると、解くべき問題そのものが変わってきます。

仕事でも、人生でも。

問題解決は、目の前を直すためだけのものではありません。

よりよい未来へ近づくために、今を変えていく方法なのだと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次