業務フローを書こうとしても、何から書けばよいのかわからない。
とりあえず作業を順番に並べてみたけれど、細かな手順ばかりになってしまう。
そんな経験はありませんか?
業務フローは、仕事の流れを整理し、関係者と共有するために役立つものです。
しかし、実際に書いてみると、意外に難しいと感じるかもしれません。
私は25年以上、業務プロセス改革(BPR)に携わるなかで、
業務フローを書くことに苦労する人を数多く見てきました。
実は、業務フローをわかりやすく書くために、難しい知識や特別な技術は必要ありません。
大切なのは、作業を順番に並べるだけでなく、業務のつながりを捉えることです。
この記事では、業務改革の現場で実践してきた経験をもとに、
初心者でも使える業務フローの書き方を5つのコツに分けて紹介します。
業務フローとは?作業手順との違い

業務フローとは、仕事がどのような流れで進み、
関係する部署や担当者の間で何が受け渡されているのかを図で表したものです。
例えば、備品を購入する業務を考えてみましょう。
「申請書に必要事項を記入する」「上司に提出する」といった内容は、個々の作業手順です。
一方、業務フローでは、申請した部署から購買部門へ、さらに発注先へと、
仕事がどのようにつながっているのかを表します。
つまり、作業手順が個々の仕事の進め方を示すのに対し、
業務フローは仕事同士のつながりを示すものです。
業務フローは成果物を基準に考える
私が業務フローを書くときに、特に重視しているのが「成果物」です。
仕事には、何らかのインプットがあり、それをもとにアウトプットが生み出されます。
例えば、発注書を作成する業務なら、
依頼メールを受け取り、必要な情報を確認して、発注書を作成します。
その発注書は、次の発注業務で使われます。
このように、何を受け取り、何を生み出し、次の業務へ何を渡すのか。
その関係がわかるように書くことで、
業務フローは単なる作業の一覧ではなく、仕事全体の流れを理解するための図になります。
難しい記号や細かな書き方のルールを覚える前に、まずはこの考え方を押さえておきましょう。
業務フローをわかりやすく書く5つのコツ

業務フローを書くときは、いきなり細かな作業から始めないことが大切です。
まずは全体の流れを捉え、そこから少しずつ詳しくしていきましょう。
ここからは、業務フローをわかりやすく書くための5つのコツを紹介します。
① 最初に対象範囲を決める
業務フローを書くときは、
まず「どこからどこまでの業務を対象にするのか」を決めましょう。
例えば、備品の購入業務を整理する場合でも、考えられる範囲はいくつかあります。
- 購入申請から承認まで
- 購入申請から発注まで
- 購入申請から納品・支払いまで
どの範囲を対象にするかによって、描くべき業務も関係する部署も変わります。
対象範囲が曖昧なまま書き始めると、
途中で業務が次々に増え、どこまで詳しく書けばよいのかわからなくなります。
また、必要な前後工程が抜けてしまうこともあります。
最初は、次の3つを確認するとよいでしょう。
- どこから始まる業務なのか
- どこまでを対象にするのか
- どの部署や担当者が関係するのか
ここでは、個々の作業を詳しく調べる必要はありません。
例えば、「購入申請を受け付けてから、発注書を作成するまで」
といった大まかな範囲が決まれば十分です。
最初に対象範囲を決めておくことで、必要な業務に絞ってフローを作成できます。
② 3つのレベルに分けて、順番に書く
対象範囲が決まったら、全体から詳細へと順番に掘り下げていきましょう。
私は業務フローを作成するとき、基本的に3つのレベルに分けて考えています。
レベル1:関係部署のつながり
まず、対象となる業務にどの部署が関係しているのかを整理します。
例えば、備品の購入なら、申請する部署、購買部門、経理部門などの関係です。
この段階では、それぞれの部署がどのような役割を持ち、何を受け渡しているのかが大まかにわかれば十分です。
レベル2:グループなど組織単位のつながり
次に、各部署の中で、どのグループや担当組織が業務を受け持っているのかを整理します。
例えば、購買部門の中でも、申請内容を確認するグループと、実際に発注するグループが分かれているかもしれません。
ここでは、組織間でどのように仕事が引き継がれているのかを明らかにします。
レベル3:個々の業務のつながり
最後に、それぞれの組織で行っている業務を具体的に書き出します。
「申請内容を確認する」「発注書を作成する」といった個々の業務です。
ここでは、業務の前後関係や情報の受け渡しまで詳しく整理していきます。
このように3つのレベルに分けることで、
個々の業務が全体の中でどのような役割を持っているのかが見えやすくなります。
もちろん、すべての業務で3つのレベルが必要なわけではありません。
対象範囲が一つの部署に限られている場合などは、レベル2から始めても構いません。
大切なのは、全体の関係を捉えてから、個々の業務へと掘り下げていくことです。
物事の全体像を図にして整理する考え方については、以下の記事でも紹介しています。
業務に限らず、複雑な情報を整理するときにも役立ちます。

③ 業務のトリガーを明確にする
レベル3の業務フローを書くときは、
まず「何をきっかけに、その業務が始まるのか」を明確にしましょう。
このきっかけを「トリガー」と呼びます。
例えば、発注書を作成する業務なら、「依頼メールを受け取ること」がトリガーになります。
一方、月末になったら集計を始めるなど、決まった日時がトリガーになる業務もあります。
トリガーが曖昧なまま業務を並べると、
なぜその仕事が始まるのか、前の業務とどうつながっているのかがわかりにくくなります。
また、業務によっては、複数の条件が揃って初めて作業を始める場合もあります。
例えば、依頼メールを受け取っただけで発注書を作成できるのか。
それとも、承認が完了していることも必要なのか。
こうした条件も確認しておくと、業務の始まりがより明確になります。
「何が起きたら、この業務を始めるのか」
個々の業務を書くときは、この問いを意識してみてください。
④ 業務名は動詞で書き、インプットとアウトプットをつなぐ
次に、それぞれの業務で「何を受け取り、何を生み出しているのか」を整理します。
ここは、業務フローを書くうえで特に大切なポイントです。
まず、業務名はできるだけ動詞を使って書きましょう。
例えば、「発注書作成」ではなく、「発注書を作成する」と書きます。
「何を、どうするのか」がわかる名前にすると、業務の内容が具体的になります。
そのうえで、業務の前にはインプット、後ろにはアウトプットを書きます。
次の図は、「発注書を作成する」業務を例にしたものです。

「発注書を依頼する」という業務から、
仕入れ先名、商品名、金額などの情報を含む依頼メールが送られてきます。
担当者は、その情報をもとに発注書を作成します。
しかし、発注書を完成させるには、依頼メールに書かれている情報だけでは足りないかもしれません。
例えば、発注書のフォーマットや、納期を決めるためのルールも必要になります。
そうした情報を別のシステムや資料から取得しているなら、その情報源も業務フローに書き加えます。
ここで意識したいのが、インプットとアウトプットに含まれる情報の違いです。
例えば、インプットにはA・B・Cという情報しかないのに、
アウトプットにはA・B・C・D・Eという情報が含まれていたとします。
では、新しく加わったD・Eは、どこから来たのでしょうか。
別の資料から取得したのかもしれませんし、
担当者が計算や判断によって生み出した情報かもしれません。
いずれにしても、その情報がどこから来たのか、どのように作られたのかを確認します。
こうして情報の出どころを一つずつ明らかにすると、
作業名を矢印でつなぐだけでは見えなかった業務のつながりがわかります。
何を受け取り、何を加え、何を次へ渡すのか。
この関係が伝わるように書くことが、わかりやすい業務フローを作るコツです。
個々の業務だけでなく、その間の関係に注目する考え方は、業務フロー以外にも応用できます。
以下の記事では、物事をつながりから捉える方法を紹介しています。

⑤ つながりに矛盾があれば、担当者に確認する
ここまで業務フローを書いていくと、
前後の業務がうまくつながらない部分が出てくることがあります。
例えば、次のようなケースです。
- 前の業務では作成していない情報を、次の業務で使っている
- ある業務で作成した成果物が、その後どこで使われるのかわからない
- 業務を始める条件がはっきりしない
こうした矛盾や不明点があれば、実際の担当者に確認しましょう。
例えば、「発注書を作成する」という業務でも、
依頼メールを受け取ったあと、担当者が別のシステムで情報を確認しているかもしれません。
また、依頼内容に不備があった場合は、依頼者に差し戻す流れがあるかもしれません。
担当者に話を聞くことで、書き漏れていた業務や情報の受け渡しが見えてきます。
ここで大切なのは、自分の推測だけで、つじつまを合わせないことです。
前後の関係から「おそらくこうだろう」と思っても、
実際には違う流れで仕事を進めていることがあります。
わからない部分は担当者に確認し、実態に合わせて修正していきましょう。
なお、矛盾して見える部分が、必ずしも業務上の問題とは限りません。
単に業務フローへの書き漏れである可能性もあります。
まずは、実際の仕事の流れを正しく表現することを優先しましょう。
こうして確認と修正を重ねることで、関係者が共通の理解を持てる業務フローに仕上がります。
業務フローを作成すると、仕事の流れだけでなく、見直したほうがよい部分に気づくこともあります。
そこから業務のあり方を考え直すときには、以下の記事も参考になります。

まとめ|仕事のつながりが見える業務フローを描こう
業務フローをわかりやすく書くために大切なのは、個々の作業だけでなく、仕事同士のつながりを捉えることです。
今回紹介した5つのコツを振り返りましょう。
- 最初に対象範囲を決める
- 3つのレベルに分けて、順番に書く
- 業務のトリガーを明確にする
- 業務名は動詞で書き、インプットとアウトプットをつなぐ
- つながりに矛盾があれば、担当者に確認する
最初から完璧な業務フローを書く必要はありません。
全体から少しずつ詳しくし、わからない部分を確認しながら仕上げていけばよいのです。
業務フローを書けるようになると、
自分が担当する仕事だけでなく、前後の業務や関係する部署の役割も見えてきます。
業務フローは、仕事を図にするだけでなく、仕事そのものを理解するための道具です。
まずは身近な業務を一つ選び、その流れを描いてみてはいかがでしょうか。

