AIで洞察を深める|表面の問題から「本質」を考える方法

AIで洞察を深める|表面の問題から「本質」を考える方法

問題が起きると、
私たちはすぐに原因を探したくなります。

会議が長い。

ミスが多い。

仕事に時間がかかる。

AIに聞けば、
原因候補はすぐに出してくれます。

でも、

AIに「この問題の本質は何ですか?」と聞くだけでは、洞察にはならない

と私は考えています。

私は長く、業務改革の仕事に関わってきました。

そこで何度も感じたのが、

見えている問題が、そのまま本当の問題とは限らない

ということです。

「なぜ、こうなっているのか」

「何が、この状態を生み出しているのか」

「本当に変えるべきものは何なのか」

と、一段深く考える。

これが、私が仕事の中で身につけてきた洞察の考え方でした。

今は、この途中にAIを入れることができます。

自分では思いつかなかった原因。

見落としていた関係。

別の問題設定。

そうした視点をAIに増やしてもらい、
そこからもう一度、自分で考える。

AIは、本質を決める相手ではありません。
本質に近づくための視点を増やす相手です。

この記事では、
AIを使って表面の問題から一段深く考え、
「本当に変えるべきものは何か」を探る方法を紹介します。


AIを使う前に、洞察力そのものの考え方や、
本質を見るための視点を整理したい方はこちらの記事も参考になります。

目次

洞察とは、見えている問題をそのまま問題だと思わないこと

洞察とは、見えている問題をそのまま問題だと思わないこと

洞察というと、

「鋭い答えを出すこと」

のように思われるかもしれません。

でも、私はもっとシンプルに考えています。

見えている問題を、そのまま本当の問題だと思わないこと。

たとえば、

「会議が長い」

という問題があったとします。

すぐに考えるなら、

参加者が多い。

話が長い。

進行が悪い。

といった原因が浮かびます。

でも、

「なぜ、この会議は長くなるのか」

と一段深く見ると、

目的が曖昧なのかもしれない。

事前共有が足りないのかもしれない。

誰が決めるのかが、はっきりしていないのかもしれない。

同じ現象でも、
本当に変えるべき場所は違います。

だから私は、

現象と、本当の問題を分けて考える

ことを意識してきました。

経験があるほど、見方が固定されることもある

経験が増えると、
原因を早く想像できるようになります。

これは強みです。

一方で、

「以前も同じだった」

「今回もたぶんこれだろう」

と、
過去の経験に引っ張られることもあります。

経験は、
考えるための材料になります。

でも同時に、
見方を固定する材料にもなります。

ここでAIが役に立ちます。

AIに、

「ほかにどんな原因が考えられるか」

「別の見方をするとどうなるか」

と聞くと、

自分では出さなかった方向が見えることがあります。

AIの答えが正しいということではありません。

ただ、

一つの見方に決めつけず、本質を考える材料を増やせる。

そこに、AIを使う意味があると思っています。


問題の見方が固定されているときは、
自分がどんな前提を置いているのかをAIと一緒に言葉にしてみる方法もあります。

AIは「本質」を答えるより、原因候補を広げるために使う

AIを使うと、

「この問題の本質は何ですか?」

と聞きたくなります。

でも、最初から一つの答えを求めると、
その答えに思考が引っ張られやすくなります。

洞察を深めたいときは、
むしろ最初は答えを絞りません。

たとえば、

「会議が長い」

という問題なら、

「会議が長い」という現象について、
原因を一つに決めず、考えられる要因を複数挙げてください。

と聞いてみます。

すると、

  • 目的が曖昧
  • 事前共有が不足している
  • 誰が決めるのか不明確
  • 報告と相談と意思決定が混ざっている

など、
自分では考えていなかった方向が出てくることがあります。

ここで大切なのは、
どれが正しいかをすぐに選ばないことです。

AIの役割は、

原因を決めることではなく、自分が見ていなかった可能性を増やすこと。

「人の問題だと思っていたけれど、
仕組みの問題かもしれない」

「時間の問題ではなく、
意思決定の問題かもしれない」

そんなふうに、
見る場所が少しずれる。

そのずれが、
本質に近づくきっかけになることがあります。

AIで洞察を深める3ステップ

AIで洞察を深める3ステップ

では、実際にAIをどう使えば、
表面の問題から一段深く考えられるのでしょうか。

私が意識しているのは、

現象を事実に分ける
→ 関係を広げる
→ 本当に変えるべきものを仮説にする

という3ステップです。

AIにいきなり答えを求めないことが、
ここでも大切です。

1.見えている「現象」を事実に分ける

最初にするのは、
原因を聞くことではありません。

まず、
実際に何が起きているのかを整理します。

たとえば、

「会議が長い」

だけでは、まだ漠然としています。

そこで、

  • 毎回90分以上かかっている
  • 参加者は8人
  • 報告、相談、意思決定を同じ会議でしている
  • 以前は60分程度だった

といった事実に分けます。

たとえば、AIにはこう渡します。

最近、定例会議が毎回90分以上かかっています。
参加者は8人です。
報告、相談、意思決定を同じ会議で行っています。
以前は60分程度でした。
まだ原因を決めず、この状況を整理してください。

ここでは、

「進行が悪い」

「参加者が多すぎる」

といった解釈は、できるだけ入れません。

まずは事実を見る。

これは、AIを使うときも変わりません。

2.現象の奥にある「関係」を広げる

次に、

「ほかに何が関係しているだろう」

と視点を広げます。

たとえば、

この現象について、原因を一つに決めず、
「人・仕組み・情報・ルール・環境」の視点から、
関係している可能性のある要因を挙げてください。

と聞いてみます。

すると、

「会議が長い」という一つの現象を、

人の問題。

進め方の問題。

情報共有の問題。

意思決定ルールの問題。

会議前の準備の問題。

と、別々の角度から見られます。

ここで大切なのは、
AIの回答を全部使うことではありません。

見るのは、

「自分は、この関係を見ていなかった」

というものです。

たとえば、

自分では「進行」の問題だと思っていたのに、

「報告と意思決定を同じ場で行っていること自体が、
会議を長くしているのではないか」

という視点が出てくる。

すると、
問題を見る場所が変わります。

洞察をAIで拡張する意味は、

答えを増やすことより、

現象の奥にある関係を増やして見ること

にあります。

3.「本当に変えるべきもの」を仮説にする

関係が広がったら、
最後に少し絞ります。

ただし、

「本質はこれです」

とAIに決めてもらうのではありません。

たとえば、

ここまでの情報から、
「本当に変えるべきもの」として考えられる仮説を3つ出してください。
それぞれについて、どんな事実を確認すれば確かめられるかも示してください。

と頼みます。

すると、

  • 会議時間ではなく、意思決定の役割分担が曖昧なのではないか
  • 情報共有の仕組みがなく、会議に集約されているのではないか
  • 会議前に考えるべきことを、会議中に考えているのではないか

といった仮説が出てきます。

ここで初めて、

「どの仮説が、実際の現象をいちばん説明できそうか」

と自分で考えます。

そして、

実際の会議を見る。

参加者に聞く。

記録を確認する。

必要なら、小さく試してみる。

洞察は、
それらしい答えを思いついたところで終わりではありません。

「ここが本質かもしれない」と仮説を置き、現実と照らし合わせる。

AIは、
その途中で視点を増やしてくれます。

でも最後に確かめるのは、
やはり現実です。

BPR時代の「入力が大変」を、AIと考え直してみる

BPR時代の「入力が大変」を、AIと考え直してみる

ここで、
私が業務改革の仕事で経験した例を使って、
AIを入れるとどう考えられるかを見てみます。

ある業務では、

「システムへの入力が大変」

「入力ミスが多い」

という問題がありました。

表面だけを見ると、

入力画面を使いやすくする。

チェックを増やす。

入力手順を見直す。

といった対策を考えたくなります。

でも当時、
私は仕事の流れ全体を見ていきました。

すると、

別のシステムで検討した結果を、
もう一度別のシステムへ入力していたことが分かりました。

つまり、
問題は「入力」そのものではありませんでした。

本当に変えるべきだったのは、

同じ情報をもう一度入力している「転記」という仕事

だったのです。

そこで、
システム同士を連携し、

前の工程で作った情報を、
そのまま次の工程で使えるようにしました。

入力を速くしたのではありません。

入力そのものを減らしました。

この経験から、

見えている問題を、そのまま問題だと思わない

ことの大切さを学びました。

では、
今ならここにAIをどう使えるでしょうか。

たとえば、

「入力が大変」「入力ミスが多い」という現象があります。
入力作業そのもの以外に、どんな構造的な原因が考えられますか?

と聞いてみます。

さらに、

前工程と後工程の関係から見ると、
どんな問題設定が考えられますか?

と問いを変えてみます。

すると、

  • 同じ情報を複数回入力している
  • システム間で情報がつながっていない
  • 前工程で作った情報を再利用できていない
  • 工程間の分断が問題になっている

といった視点が出てくるかもしれません。

ここで重要なのは、

AIが「転記が本質です」と当てることではありません。

「入力」という言葉に引っ張られていた見方を、別の方向へ広げること

です。

当時は、

現場を見る。

人に話を聞く。

仕事の流れを追う。

関係を書き出す。

そんな作業を繰り返しながら、
少しずつ本質に近づいていきました。

今でも、
現実を見ることの大切さは変わりません。

ただ、

「ほかにどんな構造が考えられるか」

「別の問題として捉えるとしたら何か」

をAIに問いかけることで、

自分だけでは出しにくかった視点を、途中に加えることができます。

AIが洞察を代わりにしてくれるのではありません。

人間が現実を見て考える途中で、

別の見方を差し込んでくれる。

そこに、
AIを使う価値があると感じています。

AIを使うほど、「違和感」は人間が持っておく

AIは、
もっともらしい説明をとても速く返してくれます。

だからこそ、
その答えに納得しすぎないことも大切です。

たとえば、

「確かにそうかもしれない」

と思う一方で、

「何か違う」

「この説明だけでは足りない」

と感じることがあります。

私はBPRの仕事をしていた頃も、
こうした違和感を流さないようにしていました。

数字は合っている。

説明も理解できる。

それでも、

「なぜか引っかかる」

という感覚です。

AIを使うときも同じです。

違和感があれば、

この説明には少し違和感があります。
ほかにどんな可能性が考えられますか?

と返してみます。

あるいは、

この仮説では説明できない点があるとしたら、何でしょうか?

と聞いてみてもいいでしょう。

AIには、
可能性を広げる強みがあります。

一方、人間には、

現場を知っている。

過去の経緯を知っている。

そして、

「何かおかしい」と感じる

という強みがあります。

AIに視点を増やしてもらいながら、

最後まで、

「本当にそうだろうか」

を手放さない。

洞察をAIで深めるときほど、
この違和感が大切なのだと思います。

1分ワーク|目の前の問題を一段深く見る

ここまで読んだら、
最近少し気になっている問題を一つ選んでみてください。

仕事でも、
日常でも構いません。

1分だけ、
AIと一緒に一段深く見てみます。

1.「何が起きている?」を書く

まずは、
事実だけを書きます。

たとえば、

「最近、会議が予定より長くなることが多い」

「読書を始めても、途中で集中が切れる」

といった形です。

ここでは、

「進め方が悪い」

「集中力が落ちた」

といった原因はまだ入れません。

2.AIに「見落としている関係」を出してもらう

次に、
その事実をAIに渡します。

この現象について、
原因を一つに決めず、
私が見落としている可能性のある原因や関係を5つ挙げてください。

返ってきた答えの中から、

「この方向は見ていなかった」

と思うものを一つ探します。

全部を使う必要はありません。

3.「本当に変えるべきもの」を一つ仮置きする

最後に、自分で問いかけます。

「つまり、本当に変えるべきものは何だろう?」

たとえば、

「会議が長い」のではなく、

「何を決める場なのかが曖昧なのかもしれない」

と考える。

正解でなくて構いません。

「ここが本質かもしれない」

という仮説が一つ置ければ十分です。

必要なら、

この仮説を確かめるには、何を見ればよいでしょうか?

とAIに聞いてみます。

事実を見る。

関係を広げる。

本質を仮置きする。

この短い往復だけでも、
目の前の問題を少し違う場所から見られることがあります。

まとめ|AIは「本質を教える相手」ではない

洞察とは、

見えている問題をそのまま受け取らず、

その奥にある原因や関係を見ながら、

「本当に変えるべきものは何か」

と考えることです。

AIを使うと、

自分では思いつかなかった原因。

見落としていた関係。

別の問題設定。

そうした視点を増やすことができます。

ただし、

AIが出した答えを、
そのまま本質だと思う必要はありません。

大切なのは、

事実を見る。

関係を広げる。

違和感を残す。

そして最後に、

「ここが本質かもしれない」

と自分で仮説を置くことです。

BPRの仕事をしていた頃、
私は現場を見て、
仕事の流れを追いながら、
少しずつ本当の問題に近づいていました。

今は、
その途中にAIを加えることができます。

でも、
考える主体までAIに渡す必要はありません。

AIは、本質を教えてくれる相手ではなく、
本質に近づくための視点を増やしてくれる相手です。

自分の経験だけでは見えなかった方向を、
AIとの対話で少し広げる。

そのうえで、
現実と照らし合わせながら自分で考える。

それが、
AIで洞察を深めるということだと思います。

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