考えているつもりなのに、なかなか答えが出ない。
本を読んだり、情報を集めたりしているのに、自分の考えが深まっている感じがしない。
そんなことはないでしょうか。
すると、
「自分には考える力が足りないのではないか」
と思ってしまうことがあります。
でも、私は「考える力」を一つの能力として考えなくてもいいと思っています。
考えるとき、私たちはさまざまなことをしています。
たとえば、
- よく見る
- 問いを立てる
- 仮に考える
- 別の可能性を考える
- 情報を整理する
- 自分の考え方を振り返る
どれも「考える」ことですが、役割は違います。
頭の中が混乱しているときに発想を広げても、うまくいかないことがあります。
まだ状況が見えていないのに、いきなり答えを決めようとしても考えは深まりません。
大切なのは、
今の自分に、どんな考え方が必要なのかを見分けることです。
考える力は、難しい問題を解くためだけの能力ではありません。
日常の中で少し立ち止まり、
「何が起きているのだろう」
「なぜそう思ったのだろう」
「別の見方はないだろうか」
と考える。
そうした小さな積み重ねでも鍛えられます。
この記事では、「考える力」を6つの入口に分けて整理します。
全部を一度に鍛える必要はありません。
今どこで思考が止まっているのかを見つけ、必要な考え方を一つ使う。
そこから始めれば十分です。
考える力は、一つの能力ではない

「考える力を鍛えたい」と思うと、
「もっと深く考えなければ」
「頭の回転を速くしなければ」
と考えてしまうことがあります。
でも、必要な力は状況によって違います。
何か問題が起きたとき、まず必要なのは、何が起きているのかを見ることかもしれません。
問題は見えていても、何を考えればいいのか分からないなら、問いを立てる必要があります。
一つの答えに固まっているなら、別の可能性を考える。
情報が混ざっているなら、整理する。
自分の思い込みに気づけていないなら、一段離れて自分の考えを見る。
私は、こうした「考える力」を大きく6つの入口として捉えています。
- 観察する
- 問いを立てる
- 仮に考える
- 考えを広げる
- 考えを整理する
- 自分の思考を見る
大切なのは、6つすべてが得意になることではありません。
今どこで止まっているのか。
それが分かれば、次に使う考え方も見えてきます。
問いを立てたあと、その答えをさらに掘り下げたいときは、「考えを深める」という方法もあります。

考える力を鍛える6つの入口

では、それぞれどんな場面で役立つのでしょうか。
一つずつ見ていきます。
1.観察する|思い込みの前に、まず見る
考えることの入口は、よく見ることです。
私たちは何かを見ると、すぐに、
「これはこういうことだ」
と意味づけたり、判断したりします。
しかし、その前に、
- 実際に何が起きているのか
- 以前と何が違うのか
- どこに違和感があるのか
を見てみます。
たとえば、いつもより会議が静かだったとします。
すぐに、
「みんな関心がないのだろう」
と考えるのではなく、
「発言した人が少なかった」
「いつも質問する人が黙っていた」
という事実を見る。
判断する前に観察すると、その後の考え方も変わります。
答えを出す前に、まず見えているものを見る。
これが考えることの入り口です。
観察力を鍛える具体的な方法は、別の記事で詳しく紹介しています。

また観察した事実から、その奥にある本質を捉える「洞察力」も、考えるうえで重要な力です。

2.問いを立てる|何を考えるかを決める
同じ出来事でも、どんな問いを置くかによって考える方向は変わります。
「なぜ失敗したのだろう」
と考えるのと、
「次に変えられることは何だろう」
と考えるのでは、出てくる答えが違います。
問いは、思考の向きを決めます。
考えが進まないときは、答えが出ないのではなく、
何を考えるのかが曖昧になっている
こともあります。
そんなときは、
- 本当に考えたいことは何か
- 何が分かれば前に進めるのか
- 問いを少し小さくできないか
と考えてみます。
良い問いとは、難しい問いではありません。
自分の思考を次へ動かしてくれる問いです。
問いの作り方については、別の記事で詳しくまとめています。

3.仮に考える|正解がなくても思考を動かす
考えるときに、
「正しい答えを出さなければ」
と思うと、思考が止まることがあります。
でも、最初から正解が分かることばかりではありません。
そんなときは、
「こうかもしれない」と仮に置いてみる
ことが役立ちます。
たとえば、
「もし原因が時間不足ではなく、やり方にあるとしたら?」
「逆の立場だったら、どう見えるだろう?」
と条件を変えてみます。
仮の答えなので、間違っていてもかまいません。
一度置いてみることで、思考が動き始めます。
こうした考え方は、思考実験として日常でも使えます。
4.考えを広げる|一つの見方に固定しない
考えが止まる原因の一つは、
一つの見方しかなくなっていることです。
「この方法しかない」
「原因はこれだ」
と決めてしまうと、それ以上考えにくくなります。
そんなときは、
- 他の見方はないか
- 別の組み合わせはないか
- 立場を変えたらどう見えるか
と、少し横へ広げてみます。
ここでは、すぐに一つへ絞る必要はありません。
まず可能性を増やし、そのあとで選べばいいのです。
発想力とは、突然すごいアイデアを思いつく力ではなく、
今ある見方から少し離れる力
とも言えると思います。
考えを広げる方法については、別の記事で紹介しています。

5.考えを整理する|混ざったものを扱える形にする
考えがたくさん出ても、混ざったままでは使えません。
事実。
感情。
アイデア。
やること。
これらを同時に考えると、何から手をつければいいのか分からなくなります。
そんなときに必要なのが、思考整理です。
私は、
出す → 分ける → 並べる → 決める
という順番で考えています。
頭の中にあるものを外に出し、種類を分け、順番をつけ、次の一つを決める。
それだけでも、混乱していた思考は扱いやすくなります。
考えがまとまらないときの整理方法は、別の記事で詳しくまとめています。

6.自分の思考を見る|一段離れて振り返る
最後は、自分の考え方そのものを見る力です。
私たちは、自分の考えをそのまま「事実」だと思ってしまうことがあります。
そこで、
「なぜ私はそう考えたのだろう」
「どんな前提を置いているのだろう」
と一段離れて見てみます。
たとえば、
「これは絶対に失敗できない」
と思っているなら、
「なぜ失敗してはいけないと思っているのか」
と問い直してみる。
そこから、自分の思い込みに気づくことがあります。
自分が何を考えているかだけでなく、
自分がどう考えているかを見る。
これがメタ認知です。
メタ認知については、別の記事で詳しく紹介しています。

どこから鍛えればいいのか
6つすべてを、一度に鍛える必要はありません。
自分が今どこで止まっているのかを見てみます。
すぐに結論を出してしまうなら、観察する。
まず事実を見る時間を増やします。
何を考えればいいのか分からないなら、問いを立てる。
考える範囲を決めます。
一つの答えに固まっているなら、仮に考えたり、広げたりする。
別の可能性をつくります。
頭の中がごちゃごちゃしているなら、整理する。
考えを外に出し、扱える形に変えます。
いつも同じ考え方に戻ってしまうなら、自分の思考を見る。
前提や思い込みを振り返ります。
大切なのは、
「自分には何が足りないか」ではなく、「今どこで止まっているか」を見ること。
止まっている場所が変われば、使う方法も変わります。
そのとき必要な考え方を選べることも、考える力の一つです。
考えるときは、具体的な問題から一度離れ、共通する本質を捉えることも役立ちます。
具体と抽象を往復する思考法は、下記の記事で紹介しています。

また考える力は、目の前の問題だけでなく、その先の全体像を描くときにも使います。
構想する方法は、下記の記事で紹介しています。

考える力は、日常の小さな問いで鍛えられる

考える力を鍛えるために、特別な時間をつくる必要はありません。
日常の中で、一つだけ立ち止まって考えてみます。
たとえば、
- 今日、少し気になったこと
- 本を読んで引っかかった一文
- うまくいかなかったこと
- 誰かとの会話で感じた違和感
その中から一つ選び、
「なぜ気になったのだろう?」
と考えてみる。
それだけでも十分です。
本を読んだり、情報を集めたりすることは大切ですが、
知識が増えることと、考える力が伸びることは同じではありません。
受け取った情報に、
「自分はどう考えるか」
「本当にそうだろうか」
「自分の経験とつながるところはあるか」
と問いを加える。
そこで初めて、情報が自分の思考の材料になります。
私自身、読書をするときも、すべてを覚えようとはしていません。
一つでも自分の考えが動けばいい。
そのくらいに考えています。
また、最初から正解を出す必要もありません。
「今のところ、私はこう考える」
と仮に置き、あとで違うと思えば修正する。
自分なりに考え、修正すること自体がトレーニングになります。
考えても同じ結論に戻るときは、考える土台になっている「前提」を見直す方法もあります。

私が考える力を「答えを出す力」だと思わなくなった理由
仕事をしていたころ、私は業務改革のプロジェクトに長く関わっていました。
そこでは、最初から答えが分かっていることの方が少なかったように思います。
問題が起きたら、
状況を見る。
何が本当の問題なのかを考える。
仮説を置く。
試してみる。
結果を見て、また考える。
その繰り返しでした。
実際に動かしてみると、
「原因は別のところにあった」
「こちらの方がうまくいく」
と分かることもあります。
だから今は、考える力を、
最初から正しい答えを出す力
とは考えていません。
むしろ、
分からない状態から、自分なりの次の一歩をつくる力
に近いと思っています。
観察することも。
問いを立てることも。
考えを広げることも。
整理することも。
自分の思い込みを見ることも。
すべては、分からない状態から少し前へ進むための方法です。
1分ワーク|今、どこで思考が止まっているかを見る
最近、少し気になっていることを一つ思い出してみてください。
そして、
「私は今、どこで止まっているだろう?」
と考えてみます。
- まだ状況をよく見ていない
- 何を考えたいのか曖昧
- 一つの答えに固まっている
- 他の可能性が出てこない
- 頭の中が混ざっている
- 自分の思い込みに気づいていない
一番近いものを一つ選びます。
そして、
見る。
問う。
仮に考える。
広げる。
整理する。
自分の思考を見る。
どれか一つを試してみてください。
次に使う考え方が一つ見つかれば、それで十分です。
考える力は、
何かを決めるところで終わりではありません。
実際に行動したあと、
何が起きたのかを見直し、
次の行動へつなげることも大切です。
経験から学びを取り出す考え方は、以下の記事で詳しく紹介しています。

まとめ|考える力とは、分からない状態から前へ進む力
考える力は、一つの能力ではありません。
この記事では、6つの入口として整理しました。
観察する。
問いを立てる。
仮に考える。
考えを広げる。
考えを整理する。
自分の思考を見る。
全部を一度に鍛える必要はありません。
今の自分は、どこで止まっているのか。
そこを見て、必要な考え方を一つ使ってみる。
それを日常の中で繰り返していけば、考える力は少しずつ磨かれていきます。
考える力とは、正解を早く出す力ではありません。
分からない状態から、自分なりに前へ進む力。
私は今、そう考えています。
観察、分析、判断といった思考力は、それぞれ単独で使うだけではありません。
実際の問題解決では、これらを組み合わせながら進めていきます。


