考えているのに、
なぜか、いつも同じ結論に戻ってしまう。
そんなことはありませんか。
その原因は、
考える力が足りないからではなく、
考える前から持っている「前提」
にあるのかもしれません。
たとえば、
「失敗は避けるべき」
「準備してから動くべき」
「成果につながらないことに時間を使うべきではない」
こうした考えは、
普段ほとんど意識しません。
自分にとって当たり前だからです。
でも、
その「当たり前」が、
知らないうちに選択肢を狭めていることがあります。
そこで役立つのが、
AIとの対話です。
AIに正解を教えてもらうのではありません。
自分では見えにくい前提を、言葉の候補として映してもらう。
この記事では、
ChatGPTを「思考の鏡」として使い、
自分の前提を見つける方法を紹介します。
前提を変える必要はありません。
まず、
「自分は何を当たり前だと思っているのか」
に気づく。
そこからで十分です。
前提は「考える前」に置かれている

ここでいう前提とは、
「こういうものだろう」
「普通はこうするべきだ」
と、自分が当たり前だと思っている考え方です。
たとえば、
「準備してから動くべき」
という前提があれば、
新しいことを始める前に、
情報を集める。
本を読む。
全体像を理解する。
という方向へ進みやすくなります。
その考え方自体が悪いわけではありません。
むしろ、
これまで失敗を減らすのに役立ってきたかもしれません。
ただ、
前提を意識していないと、
それ以外の選択肢が見えにくくなることがあります。
自分にとっての「普通」は、
一つの考え方ではなく、
事実のように感じるからです。
だから、
同じ前提の上で考え続けていると、
選択肢を増やしても、
結論は似たところへ戻りやすくなります。
大切なのは、
いきなり前提を疑うことではありません。
まず、
「自分は、どんな前提の上で考えているのだろう」
と気づくことです。
自分の前提に気づく方法は、考え方だけではありません。
普段どんな情報を見て、どんな分野を見ていないかを確かめることでも、自分の思考の偏りが見えてきます。

AIは「前提を当てる」のではなく候補を出す
前提は、
自分にとって当たり前すぎるため、
一人では見つけにくいものです。
そこで、
AIとの対話が役立ちます。
ただし、
AIに、
「あなたの前提はこれです」
と決めてもらうわけではありません。
AIの役割は、
前提の候補を出すことです。
たとえば、
「新しいことを始めたいが、なかなか決められない」
という迷いがあったとします。
AIに、
「この判断の背景にありそうな前提を挙げてください」
と聞くと、
「失敗する可能性があるなら慎重にすべき」
「始めるなら、ある程度成果を見込めるべき」
「時間を使うなら意味のある結果につなげるべき」
といった候補が出るかもしれません。
その中に、
「言われてみれば、そう考えていたかもしれない」
というものがあれば、
それが手がかりになります。
前提そのものを探るだけでなく、
同じ出来事を別の「語り方」に置き換えてみると、見方をずらすこともできます。

AIの答えは「診断」ではない
ここで気をつけたいのは、
AIが出した候補を、
そのまま自分の本音だと思わないことです。
AIは、
書いた内容から考えられる可能性を並べています。
しっくりこないものは、
捨てて構いません。
少し引っかかる。
言われると心当たりがある。
自分では普通だと思っていた。
そんな候補が一つあれば十分です。
前提探しは、
正解を当てる作業ではありません。
自分の思考を観察する作業です。
AIに答えを決めてもらうのではなく、
返ってきた言葉を見ながら、
もう一度、自分を見る。
そんな「鏡」として使うのが合っています。
AIで前提を見つける3ステップ

前提を見つけるために、
難しい自己分析は必要ありません。
最近の判断や迷いを一つ取り上げて、
3つのステップで見ていきます。
Step1|最近の迷いや判断を一つ書く
まず、
最近あった迷いや判断を一つ選びます。
たとえば、
- 新しいことを始めるか迷った
- 誘いを断るか迷った
- 提案しようとして見送った
- やりたいことを先延ばしした
といったことです。
そのとき、
「何を迷ったか」
「どう判断したか」
「何が気になっていたか」
を簡単に書きます。
たとえば、
「興味はあるが、今やっても成果につながるかわからず、始めるのを迷った」
くらいで十分です。
大切なのは、
どこで引っかかったのかを言葉にすることです。
Step2|AIに「背景の前提」を仮説で出してもらう
次に、
その内容をAIに渡します。
たとえば、
こう聞きます。
この判断の背景にありそうな前提を5つ、仮説として挙げてください。
正解を当てる必要はありません。
改善案やアドバイスは不要です。
ポイントは、
「仮説として」
「改善案やアドバイスは不要」
と伝えることです。
今やりたいのは、
問題を解決することではありません。
自分がどんな前提で考えているのかを、
観察することです。
Step3|「少し当てはまる」を一つ選ぶ
返ってきた候補を見たら、
正しいかどうかを判断しません。
「少し心当たりがある」
「言われてみると、そうかもしれない」
と思うものを一つ選びます。
たとえば、
「時間を使うなら、成果につながるほうがいい」
という候補が気になったとします。
そこで、
すぐに、
「この前提を変えなければ」
と考える必要はありません。
まず、
「自分は、こう考えているのかもしれない」
と気づくだけで十分です。
前提に名前がつくと、選択肢が増える
前提に気づいても、
すぐに考え方が変わるわけではありません。
でも、
それまで当たり前だったものを、
少し離れて見られるようになります。
たとえば、
私は長く仕事をしてきた中で、
「時間を使うなら、何らかの成果につながるほうがいい」
という考え方を自然に持っていたように思います。
仕事では、
時間も人も限られています。
何に時間を使い、
どんな成果につなげるのか。
それを考えることは、
むしろ必要な姿勢でした。
でも、
会社を離れてからも、
同じ前提だけで考えていると、
すぐには成果が見えないことに、
時間を使いにくくなります。
本を読むこと。
新しいことを学ぶこと。
文章を書くこと。
興味を持ったことを続けること。
こうしたものは、
現時点では、
何につながるかわからないこともあります。
そこで私は、
「現時点で成果が見えなくても、好奇心で続けてよい」
という見方も持てるようになりました。
成果を大切にする考えが、
なくなったわけではありません。
ただ、
すぐに成果が見えるものだけを、
選ばなくてもいい。
そう考えられるようになったのです。
前提が消えたのではありません。
判断の軸が一つ増えただけです。
「成果につながるか」で見ることもできる。
「今、自分が面白いと思えるか」で見ることもできる。
状況によって、
どちらを使うかを選べる。
前提に名前がつくことで生まれる余白とは、
こういうものなのだと思います。
前提は悪者にしなくていい

前提を見つけると、
「この考え方は直したほうがいいのではないか」
と思うかもしれません。
でも、
前提そのものが悪いわけではありません。
「成果につなげる」
という前提があったからこそ、
限られた時間を有効に使えたこともあります。
「準備してから動く」
という前提が、
失敗を防いでくれたこともあるでしょう。
前提は、
これまでの経験の中で、
自分を支えてきた考え方でもあります。
だから、
見つけた瞬間に、
「間違っている」
と決めなくていいのです。
大切なのは、
良い悪いを判断する前に、まず存在に気づくこと。
変えるか。
別の見方を試すか。
そのまま使うか。
それは、
前提が見えてから考えればいい。
前提そのものを見直したくなったら、
「本当にそうだろうか」
「反対から見るとどうなるだろうか」
と問い直す方法もあります。
ただ、
その前に必要なのは、
自分がどんな前提の上で考えているのかを知ることです。
前提は、
変える前に、
まず見つける。
そこからで十分です。
見つけた前提そのものを見直したくなったら、「前提を疑う力を鍛える方法」も参考になります。
前提を反対側から見たり、別の見方へずらしたりする方法を紹介しています。

1分ワーク|AIで自分の前提を一つ見つける
最後に、
最近あった迷いや判断を一つ思い出してみてください。
「やろうと思ったけれど、やめたこと」
「なぜか決められなかったこと」
「いつも同じ選択をしていること」
そんなもので十分です。
まず、
その出来事を一文で書きます。
そして、
AIにこう聞きます。
この判断の背景にありそうな前提を3つ、仮説として挙げてください。
改善案やアドバイスは不要です。
返ってきた候補の中から、
「少し心当たりがある」
と感じるものを一つ選びます。
最後に、
こう書いてみます。
「私は、〇〇を当たり前だと思っていたのかもしれない。」
それだけです。
前提を変えようとしなくてもかまいません。
まず、
自分がどんな土台の上で考えていたのかに気づく。
それだけでも、
いつもの考え方を少し離れたところから見られるようになります。
前提が見えても、何を考えるべきかが曖昧な場合は、AIを使って論点を整理する方法もあります。

まとめ|前提は、変える前に見つける
考えているのに、
なぜか同じ結論に戻る。
そんなときは、
同じ前提の上で考え続けているのかもしれません。
前提は、
自分にとって当たり前だからこそ、
自分では見つけにくいものです。
そんなとき、
AIに判断や迷いを渡し、
背景にありそうな前提を、
仮説として出してもらう。
そして、
「少し当てはまるかもしれない」
というものを眺めてみる。
それだけでも、
思考には少し距離が生まれます。
前提は、
疑う前に、
まず見つける。
AIを、
答えを出す相手ではなく、
自分では見えにくい「当たり前」を映す鏡として使う。
そこから、
これまで見えなかった考え方や選択肢が、
少しずつ見えてくるのだと思います。
AIを使って考えを整理したり、問いを広げたりする方法については、
「AIで思考を広げる方法」でも整理しています。


